01塗料・塗膜 02印刷・インキ 03樹脂 04粉末関係 05分散 06色関係 07試験・分析 08環境関連 09その他
01.塗料・塗膜
ここでいう新機能とはどのようなイメージをもっておられるのかわかりませんので,従来型塗料を溶剤系塗料と考え,それと粉体塗料の異なる点について述べたいと思います。
1番目に異なる点は,粉体塗料は揮発物がほとんどなく,環境に優しいことが挙げられます。地球環境の重要性を考えると,安全性も一つの機能と呼んで過言ではないかもしれません。
2番目に挙げられるのは,回収利用が可能なことです。ブースに溶剤系塗料を塗装して,それらを水と分離してまた回収利用することはほとんど不可能です。しかしながら,粉体塗料なら,ブースの下にたまった塗料をふるいにかけ,もとのガンホッパーに返せば簡単に再使用が可能です。省資源の面からは大きな利点です。
3番目に挙げられるのは,その顔料分散安定性です。溶剤系では,長期に保管すると顔料の上に吸着した樹脂が溶剤に置換され,顔料同士が凝集体を形成し,その影響で色分かれ等の顔料分散に起因する問題が発生する場合があります。しかしながら,粉体塗料の場合,溶融分散された塗料がいったん冷却されると,その顔料分散状態は変化することはなく,長期保存で色分かれが生じることはありません。
4番目に挙げられるのは,材料の選択の自由度が溶剤系よりも広いことです。溶剤系では使用できないような比重の重いもの,溶剤に溶けないもの等も使用可能です。これよって溶剤系にはできない新意匠も作成できます。
5番目に挙げられるのは,複数色が混在するまだら模様です。溶剤では,塗料状態で複数色を混ぜるとすべて均一に混合し,まだら模様ができませんので,どうしても複数塗料による塗装の塗り重ねしか方法はありません。しかし,粉体塗料なら異種塗料をドライブレンドするだけで,簡易にまだら模様を作成できます。
6番目に挙げられるのは,厚塗りが可能なことでしょう。溶剤系塗料では,1コート30μm程度なので,100μm近く塗装する場合,塗装→セッティング→焼き付けを3~4回繰り返せねばなりません。粉体塗料なら,1コートで達成でき非常に生産性が高くなります。以上が,溶剤系とは異なる特徴といえるでしょう。
(S.H.)1a7507062
粉体塗料は溶剤を使わずに塗装,焼き付けし塗膜を形成させる,究極のVOC対策塗料です。ご質問のように焼き付ける前の塗装した粉体層には空隙が有り,多くの空気を含んでいます。
なにも対策をしないエポキシ粉体塗料,ポリエステル粉体塗料,アクリル粉体塗料,ハイブリット粉体塗料(エポキシ・ポリエステル)は静電粉体塗装し焼き付けると,この空気は焼き付けのときに塗膜に残り,肉眼ではピンホールに見えます。
このように粉体塗料には空気に起因するピンホールが生じることがあります。この塗膜欠陥は塗料にピンホール防止剤を添加することにより防止できます。一般的に,この空気によるピンホール対策のために通常,粉体塗料はピンホール防止剤としてベンゾイン(2-ハイドロオキシ-2-フェニルアセトフェノン)を塗料に少量(通常0.2~1.0重量部)添加して空気から生じる気泡を破泡,脱泡しやすくしており,100μm以上でもピンホールを生じないように設計してあります。
最近,溶剤で何回も塗り重ねをしているユーザーから粉体塗料で1回で仕上げたいとの要望が増えております。粉体塗料の始まりは,1回の塗装で厚膜にする必要のある防蝕塗装関係から始まっており,ピンホール対策に関して1回の塗装で厚膜にできない溶剤型塗料よりピンホールのない厚膜塗装のできる粉体塗料は理想的な塗料といえます。 (A.Y.)1b7411048
粉体塗料を成膜させるため,一般的には,熱風乾燥炉が使用されています。しかし,加熱方法としては,他に高周波誘導加熱や遠赤外線加熱による加熱成膜方法や,さらにはUVランプによる硬化,成膜方法もあります。
粉体塗料は塗布後,樹脂粒子を溶融させ,均一で平滑にして成膜させます。熱可塑性粉体塗料はその後,冷却して塗膜を形成させるが,熱硬化性粉体塗料の場合には,樹脂内部で架橋,硬化させ塗膜を形成します。
この樹脂粒子の溶融,均一化の工程と内部で架橋反応をさせるための加熱において,組み合わせる加熱方法の特徴と選択上での注意点があります。
まず,一般的な熱風加熱方法ですが,塗布された樹脂粒子の表面側から加熱されることと,熱風により乾燥炉内での異物の巻き込み,あるいは,熱風の組成による塗膜の着色や化学的反応等に注意する必要があります。
塗布された樹脂粒子は空気を間に含んだ状態であり,ここに熱風による熱エネルギーが加わると溶融します。この時,溶融は,塗膜の表面側から内部に向かって進行します。このため,膜厚が過度に厚かったり,昇温速度が速いと,樹脂粒子の溶融,架橋反応の伝播と,内部の空気の抜け,あるいは反応生成物の抜けとの関係でピンホールが発生したりします。このため,塗膜の昇温に最適な速度があります。熱風の速度は,速いと均一に加熱するには好ましいが,異物を巻き上げたりして,塗面に付着させます。また熱風の組成,たとえば重油やガス燃焼炉の熱源で加熱するような場合,その熱風中には,炭酸ガス以外に窒素酸化物や硫黄酸化物,あるいは燃焼初期には低分子物が含まれ,塗膜表面を汚染したり硬化を過度に進行させたりすることがあります。熱風乾燥炉でも間接加熱炉は上記懸念が少ない。
高周波誘導加熱は,電気エネルギーを被塗装物の金属中から熱エネルギーに換えて塗膜を形成させる方法です。このため,樹脂粒子は塗膜の内部から表面に向かって溶融,硬化するため,塗膜中の空気等が抜けやすい特徴があります。しかし,この加熱方法には,種種の制約と注意点があります。まず適応できる被塗装物の素材に制約があります。鉄のように,高周波誘導加熱で誘導されやすくて加熱しやすい素材と,アルミニウムのように加熱しにくい素材があります。
つぎに,角張った素材では,加熱の誘導コイルの形状と電気エネルギーの分布を注意しないと先端が過度に加熱されることがあります。また,板厚にも注意を要します。薄板や細い線状の素材は,電磁誘導による熱エネルギーによって被塗装物自体の温度が急激に上昇するが,厚板は,被塗装物の金属表面で発生した熱エネルギーが,内部への伝播を差し引いた分しか温度が上昇しない。このため,各種板厚が組み合わされた被塗装物や,形状の複雑な被塗装物は,加える電気エネルギーの分布を誘導コイルと制御で均一化させる必要があります。しかし,この加熱方法は,空気の動きがないことや,エネルギー効率が良いこと,制御しやすいこと等で形状の単一な被塗装物,板厚の厚い被塗装物に粉体塗料を塗装する場合には多く使用されるようになってきています。
最近,UV硬化粉体塗料が紹介されるようになり,遠赤外線によって樹脂粒子を溶融させ,その後UVランプを照射して塗膜を硬化させる方法が新しく紹介されています。
これは,溶剤型UV硬化塗料と同じように,硬化は紫外線によるラジカル硬化を使用するため,低温硬化に適した方法です。粉体塗料の樹脂粒子を溶融させ均一な塗膜にする工程に遠赤外線エネルギーを利用するもので,熱風によるエネルギーでも使用は可能です。
粉体塗料の加熱方法として数例について説明しました。特に熱風の場合,粉体塗料の樹脂粒子が吹き飛ばされてしまうと心配することもありますが,現実には,このような条件になることは,振動で樹脂粒子が落下することと同様に極めて希なことです。。 (M.K.)1b7409046
塗装方法として,ハンガーに沢山の被塗装物を取り付け,これを粉体塗料の静電塗装雰囲気中に入れ塗装する方法や,流動浸漬塗装装置に予熱した被塗装物を入れて塗装する方法は,歴史も古く粉体塗料で全面塗装できるため,粉体塗料の特長の一つでした。
しかし,最近では,ロボットによる複雑な形状の被塗装物に対する塗装や,金属コイルの連続塗装等も一般的になってきました。
質問の被塗装物の大きさを制限する因子は,被塗装物の加熱による制約によるところが大きい。
通常の加熱炉で加温して粉体塗料を溶融,硬化させる塗装方法では,乾燥炉の設備による制約と,被塗装物の素材の組み合わせによる到達温度分布による最適硬化範囲と限界硬化範囲等,塗膜性能幅によって決定されます。
しかし,水道鋼管のように,鋳造や加工の予熱を利用して粉体塗料を成膜させる場合には,数メートルの長さの鋼管内面も容易に塗装しています。
同様に,構造物の柱のように6から8メートルと長い被塗装物も外面を粉体塗料で塗装した後,高周波誘導加熱ですぐ溶融・硬化させ,水冷することによって連続的に塗装する方法も実用化されています。とくに,この高周波誘導加熱による粉体塗料の溶融・硬化方法は,被塗装物金属の誘電率や,素材の厚さに対応して,電気的に加熱の出力を制御することによって成膜状況を最適範囲に調整しやすい等の特長があります。
同様にコイルコートのように連続被塗装物を粉体塗料で塗装する場合も現在の技術開発は,塗装スピードをいかに早くするかにあり,やがては,現在溶液型塗料の塗装スピードである100メートル/分以上になると予想されます。
したがって,粉体塗料でできる被塗装物の大きさは,乾燥炉を使用して成膜させる時には,乾燥炉に入る大きさによって制限されるが,成膜方法と塗装方法の組み合わせを選べば,被塗装物の大きさに対する制約は,大変に少なくなっています。(M. S.)1a7407042
トップコート粉体塗料の樹脂粒子の耐溶剤性と,下層塗膜中に残存する溶剤の樹脂粒子に対する溶解力や接触時間によって挙動が異なります。
トップコート粉体塗料がアクリル樹脂クリヤー粉体塗料で,下層が水性メタリックベース塗料の場合を例に述べる。水性メタリックベース塗料中には,セロソルブ系溶剤やエステル系溶剤,アルコール系溶剤など水と共に溶媒として含まれています。これらの溶剤は,粉体塗料の樹脂に対して溶解力があります。
下層の水性メタリックベース塗料が塗装され,溶剤や水が完全に蒸発した後に,粉体塗料を塗装して,2層を同時に焼き付ける場合,各塗膜層の樹脂が互いに混合せず,かつ硬化速度が適性であれば,2層は正常な塗膜として仕上がる。
しかし,下層の溶剤分が多量に残留していて,この溶剤が粉体塗料の樹脂粒子を溶解するような場合には,下層から移動した溶剤が上層の粉体塗料の樹脂粒子を溶解する。この溶解の程度が大きいと,下層の塗膜と上層の塗膜の混合が起きる。このような場合,質問者の懸念のように,形成される塗膜にはクリヤー感がない。
これは,溶剤型塗料での2コート1ベークシステムでも同じ現象があります。溶剤型塗料で第1層目に塗装した塗膜の上にウェットオンウェットで第2層目を塗装するとき,第1層目の溶剤飛散による乾燥状況や上に塗装する第2層目の溶剤の、第1層目の樹脂に対する溶解力,樹脂の層分離力等によって,第1層目と第2層目が反転したり塗膜が乱れたり,光沢が低下したりする現象が発生します。粉体塗料の塗装でも同様の現象を生じ,一般的には以下のような欠陥が発生します。
1) 塗膜にピンホールが発生する。
2) 塗膜の光沢が低下する。
3) クリヤー粉体塗料のクリヤー感が無い。
4) メタリック感が無い塗膜に仕上がる。
5) 塗膜の平滑性が低下する。
したがって,粉体塗料を塗装する段階において,下層の不揮発分を95%以上に乾燥しておけば,欠陥が発生する可能性は小さくなる。(E. T.)1a7406040
最近の粉体塗料のトレンドの一つとして薄膜化,低温化が上げられる。前者はより薄い膜で美しく平滑に仕上げること,後者は焼付塗料である粉体塗料の焼付温度を低くしていくことである。
一般的に粉体塗料に限らず塗料に使用される樹脂は,分子量が低くなるほど軟化点と粘度は下がる傾向にある。粉体塗料の焼付時に樹脂が軟化して,より美しく平滑な塗膜になるためには軟化したときの粘度は低いほうが有利である。従って,軟化点が低いほど軟化したときの粘度は低くなるので,ご質問の軟化点が低いほうが平滑な塗膜を得るには良いといえる。
しかし,低くなりすぎることによる問題もある。常温で固形であるのが粉体塗料であるので,軟化点が低くなりすぎると常温で固形を保つことができなくなり,より低温での保管が必要となるからである。また,防食用途の塗料では逆に厚膜を要求されるケースが多く,軟化点が低い(溶融粘度が低い)とタレ等の塗装不良にもつながる。
最適な軟化点というのは,粉体塗料の場合は軟化点よりもTg(ガラス転移点)で判断することが多いようである。Tgというのは固形状態の樹脂の一部が軟化する温度と理解してください。温度がTg以上になると粉体塗料の粒子同士がくっ付きやすくなり,塗装機に詰まりが発生したりして塗装に支障を来す。ですから樹脂を選択する際には最低温度として通常Tgが40℃以上の樹脂を選択する。最高温度については現在の粉体塗料(熱硬化粉体塗料)の製造方法が溶融混練法という,塗料原料に熱をかけて溶かした状態で成分を混ぜ合わせる方法がほとんどであるので,硬化反応が始まる(もしくは硬化反応が飛躍的に高まる)温度以下で製造する必要があり,それと焼付温度をあわせて考えると,140℃近辺が軟化点の上限と思われる。(T. A.)1a7404036
現在,自動車用に使用されるクリアは(1)アルミホイール用の上塗りクリア,(2)ボデー用のトップコート・クリアがあります。
アルミホイール用のクリアは日本においては数年前までは溶剤型がすべてでしたが,米国から輸入車に装着されたアルミホイールの外観が優れていたため調査され,アクリル粉体の塗装品であることが判明し,日本においても本格的に検討された結果,現在では多くの国産車のアルミホイールもアクリルクリア粉体塗装が施されるようになっている。
アルミホイールに塗装されるアクリルクリア粉体の硬化系は後に述べるボデー用のトップクリアと同様に,日本において開発された「グリシジル基官能アクリル樹脂を2塩基酸で架橋する系」である。日本から技術輸出されVOC規制の厳しい米国で実用化され逆輸入されたものである。
さて,本題の性能については溶剤系に比べ,①濡れ性で劣る,②塗膜の内部応力が大きいために,やや耐水2次付着性,耐食性に問題があったが現在は克服されて同等レベルとなり,実用化されている。鋳肌の隠ぺい性とクリアリティーで溶剤型より優れている。
つぎに,ボデー用のトップクリアについては,残念ながら国内では検討段階で実用化されていない。欧州では,BMWで採用されているのが知られている。米国においても1996年からLEPC(LowEmissionPaintConsortium)で検討されている。いずれも,先に述べたグリシジル-酸硬化系のアクリル-クリア粉体である。塗膜の平滑性は微粒子化により達成された。性能面では,溶剤系に比べ架橋密度が低い点でやや「擦り傷性」で問題ありと言われる。また,焼き付け時に黄変するため,色相に制約が出る等の欠点が指摘されている。(D. H.)1b7401031
>塗膜をプラスチックに練りこんで再使用するには,塗膜成分がプラスチックの性能を低下させないように十分に細かく分散する必要があります。逆にいいますと,微細に分散することができ,付着が十分であれば,架橋・熱可塑塗膜共にリサイクルは可能です。
塗膜の高性能化には架橋が必要ですが,細かく砕くことが困難ですので,現在推奨されていますのは,プラスチックと相溶性のある熱可塑性塗料の使用です。アクリル系塗料は普通スチレンとアクリルモノマーの共重合ポリマーですので,相溶性のある対応プラスチックはスチレン系樹脂であるHIPS,ABS,変性PPE樹脂,PC/ABSなどの樹脂です。
カルボニル基を持っている樹脂を水溶性のヒドラジド架橋剤で架橋した塗膜は,極少量の有機溶剤を含む酸性水溶液(非危険物)に浸漬することで,架橋を切り架橋剤のみを抽出することができます。この方法を適用すれは架橋塗膜の練り込み再使用も可能になります。(K. T.)1b7403035
粉体塗料がのびるといわれながら,日本でなかなか伸びないおもな理由には,次の5点が考えられる。
①日本は法的規制があまりない
②この不況で設備投資を控える企業が大半
③溶剤系塗料を扱える人材を育成・確保できる
④自動車のボディー等の多量に使用する分野への導入が遅れている
⑤外観について要求性能が高い
もっとも大きな理由としては,
①の法的規制があげられる。米国では,1990年にCAAA(Clean Air Act Amendments)が公布され,1994年に全域での新設の工場排出基準としてNSPS(New Sorce Performance Standard)が規定され,塗料VOCが数値で規制されている。将来的にはこの基準がきびしくなるにつれて生産量を抑制しなければならない事態となる。ヨーロッパでは環境会計が公表されており,環境にやさしくない企業への融資利息が高くなったり,融資枠制限を低くする銀行がでてきているのが現状である。このような状況では,企業が生き残るために法規制をクリヤできる体制つくりが必須となり,溶剤系塗料の何割かを粉体や水性に置換せざるをえなくなる。
②については,ISO14000取得にともない粉体化を進めたいユーザーがいても,この不況では設備投資を控えざるを得なく,粉体検討は進めているもののその導入時期を待っている企業も少なくない。
③については,ヨーロッパや中国,米国のように作業者の定着率が低いところでは,溶剤系塗料のようにシンナーや塗装条件の調整が必要なものを扱える人材を育成・確保することが容易ではない。したがって粉体塗料のように自動化しやすく,現場で配合調整がない塗料が非常に好都合であったと考えられる。
④については,いくらいろんなところに粉体塗料が適用されても,大量に使用される分野で採用されない限り数値ではでてこない。その点ではヨーロッパや米国のように大型電気製品・車のボディに採用されるところでは全塗料における粉体塗料比率は高くなる。ただ,この日本においてもISO14000・家電リサイクル法・環境基本法等にともない,確実に環境にやさしい塗料に向けての環境整備が整いつつある。
今後環境に配慮しない企業は生き残れない状況は確実で,粉体塗料の位置付けはますます重要になってきている。(S. E.)1a7304009
流動浸漬塗装は,予熱した被塗物を空気で流動化させた粉体塗料に浸漬しすぐ引き上げ,その後その予熱でフローさせ硬化させるものである。したがって,塗着効率は95%以上と言える。ただ,膜厚数百ミクロンと非常に厚くなる。
バレル塗装は,被塗物に塗料と媒体を打ちつけて膜を形成するものなので,やはり塗着効率は95%以上であろう。ただ,複雑な形状や部品以外の大きな被塗物にはむかない。
静電塗装はコロナ放電とトリポ荷電方式があるが,この方式がもっとも一般的で適用範囲も広いと言える。両者とも塗着効率は60~70%は可能であろう。ただし,被塗物の形状やガン配置でこれは変わる。回収再使用すれば利用効率は90%以上は可能である。
最後にベル静電塗装は,米国のGMが自動車中塗りの水平部塗装に導入している方式で,塗装範囲が広く,吐出量を高くできることが特徴である。塗着効率は70~80%は可能であろう。
以上の塗装方法の中で,電荷で付着させる静電塗装の場合,印加電圧・ガン距離・風量の最適化が重要であり,塗料側の要因では荷電制御・粒径制御等が重要である。小粒径になれば塗着効率が低下するので,回収利用を前提にすれば回収粉体塗料の時の塗着効率も把握する必要があろう。(Y. A.)1a7305012
木材については,赤外線等の加熱でフローさせた後,粉体塗料を紫外線硬化させるUVパウダーが,ヨーロッパ・米国で採用され増加傾向にある。コースターにクリヤーを塗装したり,室内の置物台に色物塗装をしたりしている。木材表面に水分がありそれが導電性膜の役目を果たし木材に直接塗装もできるようだが,導電性プライマーを塗装し,その上にUVパウダーという例の方が多いようである。UVパウダーは,通常粉体塗料より高価であり付加価値のとれる分野でしか適用できないことと,木材の場合,焼付け時水分が揮散しワキが出やすいという問題点がある。
プラスチックについては,米国でも車のリヤスポイラーに導電性プライマーを塗装した後,粉体塗装(UVパウダー以外)がおこなわれている実績がいくつかある。問題点としては,焼き付けた時にプラスチックから発生するガスによるワキや密着不良が上げられる。
その他,木材・プラスチック以外では,ガラス製品に粉体塗料を塗布している例があり,破損防止・美観意匠のために熱可塑粉体や熱硬化粉体が塗装されているようである。ガラス製品には透明性・高外観が必要と考えられる。(T. O.)1a7306014
静電塗装の方が塗着量が多いということはない。ただ静電塗装の方が吐出量を上げることができるので(最大吐出量:静電塗装:400g/min,摩擦帯電塗装:150g/min),いちどにたくさん塗装することはできる。すなわち時間当たりの塗装面積を増やすことができる。しかし時間をかければ,摩擦帯電塗装でも静電塗装と同じかそれ以上の膜厚を付けることは可能である。
しかし,摩擦帯電塗装は静電塗装より塗着効率が低いと言われている。これは静電塗装が電圧をかけて強制的に粉体粒子を帯電させるため,被塗物との間にも外部電界を作り電気力線と言われる帯電粒子の通り道のようなものができる。これは被塗物の裏側にも回り込み,従って粉体粒子も裏側にもかなり付着する。一方摩擦帯電塗装は,この電気力線ができないので狙ったところにしか付着しない。これが摩擦帯電塗装の方が一般的に塗着効率が低い理由である。
それ故,この摩擦帯電塗装の塗着効率を高めるためには,できるだけ正確に被塗物を狙って塗装することが大切である。同じ理由でレシプロは使わない方が無難である。
摩擦により粒子を帯電させるので,吐出量を多くすると摩擦しない粒子ができてしまう。吐出量は100g/min程度に抑え,十分粉体粒子が帯電するようにする。同じく帯電量を上げるため,搬送,分散のエア圧をその摩擦帯電ガンに応じた適切な値に設定する。
また摩擦帯電塗装は,塗料の品種を選ぶので摩擦帯電用として設計された塗料を使用することが必要である。(N. W.)1b7311027
01塗料・塗膜 02印刷・インキ 03樹脂 04粉末関係 05分散 06色関係 07試験・分析 08環境関連 09その他