01塗料・塗膜 02印刷・インキ 03樹脂 04粉末関係 05分散 06色関係 07試験・分析 08環境関連 09その他
03.樹脂
曇りを生ずる温度で評価する場合,評価は何が影響するかというと溶剤と樹脂の親和性ですから,樹脂の分子構造に支配されますし,一方の溶剤の種類によっても当然変化します。ロジン変性フェノール樹脂で考えてみますと,たとえばオフセットインキに使用される溶媒は非極性ですので,樹脂の分子量が低い,側鎖にアルキル基がたくさん存在するような場合にトレランスは上がる方向になります。この他にも樹脂の物性面からは,酸価,水酸基価などを制御することによってもトレランスを調整できることが判っています。 (T.D.)3c7509068
それぞれ特徴があり,被塗物も違っているので,一概にどちらが優れている劣っているという問題ではないと考えて下さい。ただ,アクリル樹脂とエポキシ樹脂では,コンタミはじきは,明らかにアクリル樹脂が強くエポキシ樹脂が弱いといえます。アクリル粉体塗料を塗装するときに,少々エポキシ粉体塗料が混ざってもほとんどコンタミはじきは生じません。しかしながら,エポキシ粉体塗料を塗装するときに,少しでもアクリル粉体塗料が混ざると,はげしいコンタミはじき・へこみを生じます。アクリル粉体塗料を粉砕した装置やアクリル粉体塗料を塗装した部屋をきれいに洗浄したつもりでも,その後にエポキシ粉体塗料を粉砕したり塗装しようものなら,はじき・へこみが全面に出て驚くことがあります。だからといって,エポキシ粉体塗料には,密着性や耐食性というアクリル粉体塗料よりも優れる特徴もあることから,両者を工場や実験室で混在させない工夫を実施し,両者をうまく使い分けていくことが重要と考えてください。 (H.K.)3b7506061
トレランスには二つの意味があります。一つは,溶剤への樹脂の溶解性を意味し,二つ目は,樹脂への溶剤の入りやすさを意味します。これは一例ですが,ある比率でロジン変性フェノール樹脂と溶剤とを加熱・混合した後,冷却していった場合に曇りを生ずる温度で表す場合があります。したがって評価する溶剤によってはこの温度は変わってきます。オフセットに用いる樹脂としては,多種の溶剤との組み合わせにおいて,樹脂が溶剤に良く溶け,かつ溶解できる溶剤が多いほうが,トレランスは広い(大きい)といった説明をします。
SP(ソルビリティパラメータ)三角座標(分散力,極性力,水素結合力)で樹脂の溶剤への溶解性を評価することがありますが,溶剤種類も多く測定に時間がかかるため,各インキメーカーは独自にトレランス評価方法を規定しているのが現状です。したがってトレランスそのものは世界的にみても統一規格はありません。 (S.I.)3b7509067
一般的な粉体塗料の樹脂に求められる主な特性は,まず塗装環境下で固形を保つことと,塗膜の成膜時には流展性を持つことがあげられる。このため,少なくとも30℃で塗装できる粉体塗料の性状を保ち,樹脂と硬化剤等の組み合わせによって異なるが,焼付温度120℃以上で粉体塗料が軟化して,流展性を発揮する必要がある。また,樹脂の構造,極性基の種類,量等と分子量分布,とくに低分子量の樹脂の混合割合等によっても塗膜の流展性と塗料の貯蔵安定性などに与える,相反する性質がある。
一般的な熱硬化性粉体塗料の場合,日本の夏期最高気温である35℃程度の貯蔵安定性が要求され,軟化温度は,50℃以上を求められる。大まかな目安としては,Tg50℃から90℃程度になる。近年,低温硬化薄膜美装用粉体塗料の設計には,粉体塗料の貯蔵安定性,塗装作業性を阻害しない範囲で,低いTgに挑戦する場合が多くなってきた。
このため,樹脂の分子量分布も低分子量側で狭く,シャープな樹脂を求めるようになってきた。この結果,粉体塗料用樹脂は,単一構造の化合物の結晶が示すように,融点以上に加熱されると樹脂の粘度が極端に低下し,良好な流展性を示す反面,溶液型塗料と同じように,成膜する塗膜にダレの欠陥を生じ易くなってきた。
一般的熱硬化性粉体塗料に使用する樹脂の分子量分布は,ポリエステル樹脂の場合,数平均分子量で1500~7000程度,一般的には4000程度が使用される。
また,アクリル樹脂の場合,数平均分子量で2000~10000程度の樹脂が使用される。
エポキシ樹脂の場合,一般的に使用されるビスフェノールAジグリシジルエーテル樹脂やエポキシ―ノボラック樹脂の平均分子量は,約900~4000,一般的には1500前後の樹脂が使用される。
この他に熱硬化性粉体塗料に使用する樹脂としてフッソ樹脂,ブロックイソシアネート樹脂,アミノ樹脂等があり,熱可塑性粉体塗料用樹脂として,ポリアミド樹脂,フッソ樹脂,ポリオレフィン樹脂などがあるが,割愛する。(T. S.)3b7309022
ロジン変性フェノール樹脂はフェノールホルムアルデヒド初期縮合物をロジンによる変性と多価アルコールとのエステル化により高軟化点,油溶性としたもので,ご質問のように,現在はほとんどのオフセットインキで主樹脂として使用されています。その理由としては主に以下の点が挙げられます。
1) インキの粘弾性制御が比較的容易―オフセット印刷におけるローラー間のインキ転移性を上げるためには,インキに適切な粘性,弾性が必要になります。ロジン変性フェノール樹脂は分子量や溶解性の調整,あるいはアルミニウムキレート剤によるゲル化などにより,破壊される歪みが比較的大きい,あるいは破壊されにくい構造粘性を付与することができます。顔料等の凝集構造に起因する小さい歪みで破壊される構造粘性と併せてオフセットインキに必要な粘弾性を制御することができます。近年の高速印刷ではミストの低減が要求されますが,このための高弾性化についても分子量や内部架橋密度を変えることで対応できます。
2) 硬さと柔軟性のバランスがとれた印刷被膜を形成できる―ロジン変性フェノール樹脂は軟化点と分子量が上げられるため,硬い印刷被膜を形成することができます。また,分子量分布が広いために柔軟性もつけられ,バランスがとれた耐性とすることができます。これを溶解性と併せて制御することで,印刷被膜の耐摩擦性とインキのセット性を比較的容易に高めることができます。
3) 顔料分散性が良好―他の樹脂系に比べて比較的良好な顔料分散が実現できます。これは樹脂分子中に油溶性部分と低溶解性部分があることおよび分子量分布が広いことに起因すると考えられます。流動性に優れたインキが得られ,印刷物の光沢も上げられます。
4) 比較的安価で幅広い物性制御が可能―合成条件や原料構成を変えることで,分子量(分布),溶解性,極性基濃度等を幅広く制御することができ,オフセット印刷全般に対応できます。原料のロジンは生産量が多く,大量に消費されるオフセットインキ用途に適しています。
他にもいろいろな理由が考えられますが,今のところこれらを同時に満たす他の樹脂系がないことが理由と考えていいでしょう。ただし,今後は環境面の要請が強くなる可能性もあり,樹脂の原材料構成が大きく変化することも考えられます。(S. I.)3b7407043
ご質問の内容は,架橋反応の速さについての問い合わせかと思われるので,それに対してお答えする。
まず,熱,光架橋に関わらず,色材そのものが,それぞれの架橋反応に大きな影響を及ぼすような構造を含んでいるかどうかが重要である。すなわち,イソシアネート型であれば活性水素の有無,ラジカル重合型であればハイドロキノンやヒンダードアミンのような重合禁止剤と類似している構造の有無,カチオン重合型であれば水やアミンのように成長カチオンと反応する塩基性構造の有無があげられる。たとえば,カチオン重合の場合,色材としてフタロシアニンやキナクリドンのような塩基性顔料を用いると,熱,光(UV),電子線(EB)に関わらず架橋反応は遅くなると考えられる。
光(UV)架橋では,上記に加えて,光重合開始剤の吸収波長と色材の吸収波長がオーバーラップすると,色材による光吸収が生じるため,架橋反応は著しく遅くなる。たとえば,ラジカル重合型のUVインキでは,紅(マゼンタ),黄色(イエロー),藍(シアン)の順で硬化が遅くなり,墨(ブラック)では極端に硬化が遅くなることが知られている。
色材によっては,架橋反応の速さ以外に,黄変が生じる場合がある。たとえば,イソシアネート型では,色材そのものに活性水素があると,黄変が起こりやすくなることが考えられる。(T. I.)3c7305013
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