色材 Q&A 05分散

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05.分散

Q1. 超臨界二酸化炭素における分散のメカニズムについて教えて下さい。

超臨界状態は液体でも気体でもない中間の状態で,超臨界二酸化炭素について物性を比較すると表のようになります。
表から分かるように,超臨界状態では密度は液体に近く,さまざまな物質に対する溶解度は確保できます。このため,分散剤や樹脂などは通常の分散工程と同様に,使用することができます。
また粘度は気体に近く,かつ拡散係数が液体より大きいため,顔料粒子凝集体の粒子間隙間への浸透速度が速くなります。このため,超臨界二酸化炭素を溶媒として顔料分散を行うと,通常の顔料分散過程ではぬれが阻害されて分散できないような顔料でも,超臨界二酸化炭素中では,ぬれが進行して良好な分散を行うことができます。
当然,超臨界状態で分散を行うためには,高圧を維持する必要があり,それなりの工夫がされた分散機を用いる必要があります。

表 超臨界二酸化炭素の物性比較
気体 超臨界流体 液体
密度 (g/cm2) 0.0006-0.002 0.2-0.9 0.6-1.6
粘度 (μPa s) 10-30 10-90 200-3000
拡散係数 (cm2/s) 0.1-0.4 (0.2-0.7)x10-3 (0.2-2)x10-5
Q2. 化粧品における顔料分散には,どのような分散機を使用していますか。

液状化粧品における粉体分散機について
液状化粧品は,肌を健やかに保つためのスキンケア化粧品,毛髪を健やかに保つヘアケア化粧品,色彩を施して特徴を引き立たせるメークアップ化粧品,さらには,近年,皮膚ガンとの関係がクローズアップされてきた紫外線から肌を防御する目的の日焼け止め化粧品と多岐にわたっている。
ひと昔前までは,粉体を配合している化粧品といえば,メークアップ化粧品類といわれていたが,近年はほとんどの液状化粧品にも粉体が配合されているといっても過言ではない。
1.化粧品での粉体の役目
① 適度な被覆力(カバー力)の付与
② 適度な延展性の付与
③ 適度な付着性の付与
④ 感触調整(良い感触)
⑤ 良い色調やツヤの付与
⑥ 化粧の持続性の付与
⑦ 紫外線の防御
⑧ 皮脂・汗の吸収
2.化粧品に配合される粉体とその特徴
化粧品に配合される粉体としては,無機顔料(二酸化チタン,酸化亜鉛,ベンガラ,黄酸化鉄,黒酸化鉄,群青,シリカなど),有機顔料(タール色素,レーキ色素など),雲母チタン硫酸バリウム,粘土鉱物(タルク,マイカ,カオリンなど),有機粉末(ナイロン,PMMAなど)などがあり,さらにこれらの複合物も開発され使われている。これらの粉体の形状は,微粒子,塊状,球状,板状,針状不定形と様ざまであり,粒子径も小さいものは8nmから,大きいものは30μmのものまである。
また,いまさらいうまでもないことであるが,それぞれの粉体の表面性質も異なることから,表面性を変えて配合を容易にするために,たとえば,油剤,金属セッケン,界面活性剤などを粉体にコーティングして表面改質されたものも汎用されている。
3.化粧品の粉体分散の重要性
粉体の液状化粧品への配合時,良分散であることは重要である。とくに,メークアップ化粧品は,ファンデーション,口紅,マニキュアなど,色調を重んじる商品ばかりで,粉体の分散の良否が商品の良否を左右する。そのため,配合する粉体の特徴を把握し,長所を生かす分散機を選択しなければならない。
たとえば,分散機の選択と色に関することとして:
① 粉体粒子の大きさ,形が変化し,本来の特徴が損なわれる。
② 混合粉体では,それぞれの粉体の比重差が異なることから発色に差が生じる。
③ それぞれの粉体の水や油剤などに対する濡れやすさ,分散・凝集の程度により,混合色に差が生じる。
などの現象に注意が必要である。
また,ポイントメークアップ製品によく配合される有機顔料に関しては,
① レーキ類は,油剤や溶剤に対するブリード性がある。
② 顔料段階での色調管理と,その分散系での経時安定性の良否。
を十分に考慮する必要がある。
さらに,作業上の観点からは,
① 機器の操作の難易度(安定性も含む)。
② 洗浄の容易さ。
③ 機械的性能(分散度,配合量,温度調節の可否,コンタミの可能性など)。
などにも,当然のことながら,配慮する必要がある。
4.よく使われる分散機
液状化粧品の製造によく使われる分散機を分類し表に示す。なお,分散物要素は,大きくは粉体粒度,液体分,粘性の3つであり,分散機の選択時の指標とされるので併記した。
さらに,粉体粒度は,粗(数十μm以上),中,細(数μm以下)とする。また,液体分の「多」はバインダーの粘性が低ければスラリー状であり,粘性の「高」は1万cp以上,「低」は100cp以下程度が目安である。

機械名
(通称)
分散物要素
粉体粒度 液体分 粘性
①ボール型
 ボールミル 粗-細 多-少 高-低
 サンドミル 中-低
 ビーズミル 中-低
②ブレード型
 ニーダー(高粘性) 中-細 中-少
 パドルミキサー(中速) 粗-中 中-少 中-低
 プラネタリーミキサー(中速) 粗-細 多-少 高-低
 ヘンシェルミキサー(高速) 中-細 多-少 中-低
③ロール形
 3本ロールミキサー 多-中 高-中
④その他
 ライカイ機 粗-細 多-少 高-低
 コロイドミル 中-低

粉体を配合した液状化粧品は,口紅,マニキュアのように少量多品種(多色)のもの,日焼け止め剤のように1品種大量生産のものなど多岐にわたり,さらに,粉体の性質もそれぞれ異なるので,上記の分散機を適宜選択して製造されている。状況によっては,一つの製品を複数の分散機を使用して製造することもよくあることである。 (H.F.)5a7501051

Q3. 顔料分散でよく「過分散」という言葉を耳にしますが,どういうことですか。

光沢や着色力などは顔料の分散度に依存し,分散すればするほど増加すると考える人が多くいます。しかし,現実には,分散機の滞留時間を長くするなどして,投入する分散エネルギーを大きくしていくと,ある程度光沢や着色力が増加するのですが,その後,逆に減少することがあります。また,光沢や着色力は減少しないまでも,投入した分散エネルギーの増加によって,分散系の粘度が急激に増加したり,その顔料を含むコーティング膜の耐候性や耐水性が急激に低下する現象が観測されます。
このように,分散工程で投入するエネルギーを大きくした際に,当然増加すると予測される特性(光沢や着色力)が逆に低下したり,粘性や耐候性などの諸特性が不連続的に低下する現象が「過分散」と呼ばれています。
多くの場合,顔料は一次粒子が多数寄り集まった凝集体として顔料分散工程に供され,これを理想的には一次粒子の状態まで解凝集するのが顔料分散工程の目的なのですが,過剰なエネルギーが投入された場合,一次粒子をさらに破砕してしまうことが考えられます。顔料の一次粒子は多くの場合,結晶体であり,それが破砕されると格子欠陥の生成などにより,その表面が活性になり,活性表面同士の粒子間相互作用が増加します。この結果,相互作用が強い場合には,顔料粒子の凝集により光沢や着色力が低下します。また,相互作用が比較的弱い場合には,顔料粒子がフロキュレートと呼ばれる構造を形成し,分散系の流動性が低下します。さらに,活性表面が露出する結果,耐候性や耐水性が急激に低下することになります。
すなわち,一次粒子の破砕が「過分散」現象の主要な原因と考えられます。(D.J.)5a7512073

Q4. 有機顔料の易分散化処理にはどのようなものがありますか。

顔料を分散するためには,凝集している粒子間に溶剤やビヒクルを浸透させ,さらに表面をビヒクルで覆うことによって立体的な反発力や静電的な反発力で再凝集するのを防ぐことが必要である。有機顔料の多くは非極性であり,溶剤やビヒクルの浸透性を上げ吸着を促進するために粒子表面にある程度の極性をもたせる場合がある。易分散化処理はこうした表面処理を指すことが多い。
顔料の表面処理は,分散補助成分をたんに吸着させる方法と,表面を直接改質してしまう方法に分けられる。前者は顔料誘導体やポリマーなどによるコーティングが,後者はプラズマ処理や紫外線処理,化学的な表面改質があげられる。
有機顔料は顔料と類似の構造を持つ化合物を吸着しやすいという性質があり,顔料骨格または類似の化合物に極性基を持たせた顔料誘導体をあらかじめ合成し,顔料表面に吸着させることによって分散性を向上させることができる。この場合,顔料誘導体の顔料骨格または類似の骨格がアンカー部となり,極性基がビヒクルの吸着基(テール部)となる。顔料に対して数%程度添加することが一般的である。銅フタロシアニンやキナクリドンレッド,不溶性アゾ顔料骨格に極性基を導入した顔料誘導体がよく使われ,誘導体単独で市販されているものもある。
ポリマーによるコーティングとして代表的な例はカプセル化である。コーティング剤としては用途に応じて種々の樹脂があるが,いずれの場合でも顔料を被覆するためには顔料と同程度以上の樹脂を必要とすることが多い。被覆にはカプセル化のあらゆる手法が提案されているが,大事なことは顔料がカプセル中で微細に分散されていることである。また被覆している樹脂によっては分散に適した溶剤系が限定される場合があり,使用に際して注意が必要である。
顔料のプラズマ処理や紫外線処理は乾式のまま行う表面改質で,処理ガスによって水酸基やカルボン酸などの酸性基やアミノ基やイミノ基などの塩基性基が導入される。化学的に改質されているため分散系を選ばず汎用性が広いが,比較的処理コストが高くなる。一方,溶液中で微粒子表面に生成させたラジカルや重合開始基からのグラフト重合で顔料に種々の官能基を導入したり,表面官能基と末端反応性ポリマーとの反応でポリマーをグラフトする方法も提案されている。 (I.O.)5a7506060
Q5. 顔料粒子の分散度によって,発色が変

Q5. 顔料粒子の分散度によって,発色が変わるのはなぜですか。

顔料はいろいろな製品の色材として用いられています。顔料を構成する色素分子が発色するのは,可視光波長領域のうち,特定波長領域の光が吸収されることでその余色が私たちの目に見えるからです。これは色素分子を形成する多環芳香環,ドナー/アクセプター基や金属配位などによって形成される分子軌道上の電子が光エネルギーを吸収し,π-π*やn-π*などの電子遷移を引き起こすことによります。そしてそのエネルギーの大きさの波長が吸収されることによって余色が決まります。これが分子レベルでの発色のメカニズムです。
しかし顔料は通常分子レベルではなく色素分子の会合体あるいは結晶体,さらにそれらの集合体として存在します。そのため顔料の発色には分子レベルによる化学構造だけでは説明できず,色素集合体としての発色の挙動を考える必要があります。これは,顔料が粒子としての大きさや形状を有し,顔料粒子を通過した透過光や粒子表面での反射光が加わるからです。従って顔料の発色はこれら由来の異なる光を総合的に観察する結果を意味します。
では今回,ご質問の顔料粒子の分散度によって発色が変わるメカニズムを考えてみましょう。顔料は通常最小単位が数十μm~数十nmの粒子径をもった微粒子粉体の集合物(凝集体)です。分散とは顔料同士の粉体としての凝集を解すことで,粒子界面に有機溶剤などの液体が浸透し濡れ,分散剤によって再び凝集しないように安定化させることをいいます。
分散が進行すると,顔料の凝集体の大きさがどんどん小さくなっていき,顔料粒子個数は増大しながらも最終的にはほぼ最小単位の粒子径まで解れていく現象がほとんどです。この凝集体の粒子径の減少によって,光は顔料粒子表面での反射の割合が減少し,透過の割合が増加することになります。
つまり,このように分散度の変化によって,粒子個数の変化に伴う光吸収確率の変化,さらに顔料凝集粒子径の変化による光透過度の変化,顔料表面での光散乱度の変化が生じ,その結果として発色度が変化すると考えられます。 (H.F.)5a7505058

Q6.溶解性パラメータについて教えて下さい。

溶解性パラメータ(Solubility parameter, SP)は凝集エネルギー密度(cohesive energy density)の平方根と定義され,混合によるエントロピー変化がほとんどゼロで,エンタルピー変化が起こる正則な溶液をもとにHildebrandとScottにより提唱されたパラメータです。溶剤や代表的な高分子物質のSPがポリマーハンドブックにまとめられています。化学構造が類似している溶媒と溶質ではSPが接近し,溶解熱が小さくなるため溶けやすい。“似たもの同士は互いによく溶ける”という経験則と一致し,溶解に関する最も身近なパラメータといえます。単位は,当初(cal/cm^3)^1/2が用いられていましたが,SI単位系の(MPa)^1/2が一般的になっています。
溶剤のSPは蒸発熱より,また高分子については粘度,あるいは膨潤度測定や逆ガスクロマトグラフ法により求められています。SPが未知の場合,推定方法としてはHildebrand則や経験的に導かれた表面張力との関係を利用する方法,構造式をもとに原子団の凝集エネルギー定数を利用するFedorsの方法などがあります。
SPを用いて溶解,相容,接着,凝集,分散など分子間相互作用によって起こる現象の状態を説明することができ,溶剤,樹脂,可塑剤,非イオン界面活性剤,顔料や粒子の表面などを特性付けることができます。そのため,溶剤の選択,相容性の予測など塗料,印刷インキ,ゴム,プラスチックなどの分野で利用されています。しかし,実用系では官能基による化学的な相互作用もあるため,SPによる予測には例外も起こります。
SPによる予測精度の向上を図るため,C.M.Hansenによって提唱された三次元SPが利用される例が多くなっています。三次元SPの概念はHildebrandらのSPを分散力,極性力,水素結合力が寄与するベクトルの3成分を合成したベクトルであると定義することによって,SPの適用を極性物質間の相互作用領域にまで可能にするものです。HildebrandらのSPとC.M.Hansenの三次元SPの間には,下記の関係があります。
δ^2=δd^2+δp^2+δh^2
δ:SP(Hildebrandらの定義)
δd,δp,δh:分散力,極性力,水素結合力に起因するSP
(C.M.Hansenの定義)

(F.Y.)5b7503055

Q7.目的の色にするため,3種類の塗料を混ぜて使用したところ,だんだん黒味がなくなってしまった。

これには黒系顔料の単独凝集と他の顔料との共凝集の二通りが考えられる。これを明確にした上で,その凝集を解決する必要がある。それらの方法としては分散剤を新たに加えるか,主要樹脂(溶剤を含めて)を変更するか,黒系顔料(または共凝集の相手顔料)を変更するかなどを考えることになる。しかし,混合するときは,少量にて,相溶性を確かめる必要がある。そのときすでに凝集が認められていたはずで,だんだん黒味がなくなってしまってからでは,遅すぎることになる。
(T. I)5a7301001

Q8. 樹脂メーカーでも行える顔料分散性の評価方法の注意点について。インキメーカーから顔料の提供を受けて顔料分散性を評価した場合,実際のインキ配合(添加剤,併用樹脂等が入った場合)との間で相関性が取れるものでしょうか。

インキを設計する上で樹脂に求められる性能として,①顔料分散性はもちろんのこと,②流動性,③光沢,④乾燥性,⑤溶剤に対する溶解性等がいずれも印刷適性に繋がる諸物性として重要である。さらに⑥基材(用紙やフィルム等)に対する着肉性,接着性,⑦後加工適性なども欠かせない性能である。
その中でも顔料分散性は,②,③の流動性や光沢にも大きく影響を及ぼす重要な性能である。
オフセットインキ用樹脂を例にとると,樹脂の顔料分散性の評価をする場合,a)流動性,b)光沢,c)着色力の発現性,d)乳化適性および乳化後のインキの流動性等で評価することができる。樹脂および樹脂ビヒクルが十分な顔料分散能を持たない場合,顔料が凝集構造を作りやすくなる。その結果,流動性,光沢,着色力の低下を引き起こすこととなる。また,オフセットインキにおいては,湿し水との乳化適性は重要なファクターである。顔料が樹脂ビヒクルにより十分ウェッティングされていない場合,湿し水が顔料と樹脂ビヒクル界面に配向し,その結果,乳化率が過度に高くなったり,乳化インキの流動性が極端に低下する。
通常オフセットインキを設計する場合,複数の樹脂を併用することが多い。その場合,それぞれの樹脂に求める機能は異なる。顔料とのウェッティングを主眼に置いた分散用樹脂と,インキの粘弾性,諸適性,諸耐性を整えるためのレットダウン用樹脂とで機能を分けることが多い。ご質問が樹脂の顔料分散性の評価とのことであるので,顔料分散を主眼に置いた樹脂と想定すると,先に述べたa)~d)で評価することができる。確かに添加剤や併用樹脂の影響がないとは言えないが,実際のインキ配合との相関性は高い。顔料面からも表面処理や顔料誘導体の併用といった分散性向上に対するアプローチがあるので,樹脂の顔料分散性を評価する場合,実際使用される顔料との組み合わせで評価することは賢明である。(K. M.)5a5305011

Q9.インキや塗料の製作上,顔料の分散の良否は重要な項目ですが,顔料と樹脂の親和性(分散性・相溶性)を判定(計測評価)する方法を教えてください。

溶剤系では,従来から溶解性パラメーター(SP)と,酸塩基相互作用に基づく考え方が著名である。個々の詳しい内容はスペースの関係でここでは紹介できないが,前者では,樹脂と顔料に対し種々の溶剤に対する溶解性や懸濁性からSP値を決定し,それぞれのSP値が近いほど親和性が良いとする考え方である。後者では,たとえば樹脂が酸性ならば塩基性の顔料を使用すると樹脂と顔料の間に酸塩基相互作用が生じて良い分散が得られると考える。樹脂と顔料の酸性度・塩基性度を評価する方法としては,非水滴定法や逆相ガスクロマトグラフィー法などが用いられる。
水系では,疎水性相互作用と静電引力に基づく考え方が知られている。前者では顔料表面の疎水性部分と樹脂の疎水性官能基が相互作用することになる。顔料の疎水性度は水湿潤熱や水蒸気の吸着量等の測定で定量化することができる。後者では顔料の静電荷と樹脂の静電荷のクーロン力が引力の場合に樹脂が吸着して良い分散が達成されると考え,ゼーター電位計などにより顔料の電荷測定がなされている。樹脂の静電荷を顔料への吸着に用いる場合には注意が必要である。すなわち,樹脂の静電荷は樹脂そのものを水溶化する機能があるため,これを顔料表面に取られた場合,樹脂は吸着したものの樹脂の水和安定性が阻害されて,系全体としては不安定になることが考えられるからである。
以上では,樹脂,顔料の特性を何らかの尺度で別々に評価しておいて,両者の親和性を予測する方法について解説した。その他に,樹脂吸着量や吸着等温線を測定したり,樹脂吸着熱を測定したりする方法が提案されている。(T. K.)5b7304010

Q10.化粧品における顔料分散では,どのような分散剤を使用していますか。

化粧品における顔料の分散は,パウダリーファンデーションのように粉末中に分散させる場合と,サンスクリーン,乳化ファンデーション,口紅,ローションのように液体中に分散させる場合とがあります。粉末に分散させる場合には,一度分散させてしまえば顔料は再凝集しないために,機械による衝撃力やせん断力を用いて分散させ,いわゆる分散剤はほとんど使用しません。しかし顔料自体の凝集を少なくするために,表面処理を行ったり,分散しやすいように顔料形状を工夫したりということが行われています。
一方,顔料を液体に分散させる場合には解砕等の機械力で顔料を分散させても経時で再凝集を起こすので,これを防ぐことが必要です。
水への分散においては,粉体の表面電荷の反発を利用して分散安定性を確保する目的で表面電荷調整剤が使用されます。また,表面電荷や極性などの表面の性質に応じて吸着しやすい構造にした界面活性剤を使用することで疎水性相互作用による安定化や,ポリビニルアルコールを保護コロイドとして使う立体障害による安定化等が行われています。
油への分散の場合には表面電荷の影響はほとんど受けないことから,主に界面活性剤や高分子化合物を吸着させて分散安定性を図ります。このうちサンスクリーンの場合には汗や水で流れ落ちない化粧もちの良さを重視するためW/O乳化系基剤が主流で,二酸化チタンや酸化亜鉛が紫外線防御剤として外相(油)に分散されます。特にこの場合顔料分散の良し悪しが,紫外線防止効果や白さに繋がるため,分散は重要です。またサンスクリーンにはべたつかずさっぱりとした使用感が求められるので,シリコーンオイルが主に使用されます。このシリコーンオイルへの顔料の分散には,ポリオキシエチレン変性,ピロリドン変性等のシリコーン系の界面活性剤が使用されます。また最近では高分子系シリコーンが分散剤として使われることも多くなっています。なお,油分に顔料を分散する場合,一次粒子で分散させるよりも,むしろ一次粒子が穏やかに凝集しているほうが沈降しても再分散性が良好なので好ましいと考えられます。 (K.O.)5b7412050

01塗料・塗膜   02印刷・インキ   03樹脂   04粉末関係   05分散   06色関係   07試験・分析   08環境関連   09その他

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